意匠の定義

 

一般に、デザインは、広告ポスター、グラフィックデザイン等のような視覚デザイン、生活空間や環境に関する環境デザイン、製品に関する製品デザイン、建築に関する建築デザイン、都市設計に関する都市デザイン、オンライン上のデジタルデザイン等を包括する広義の概念として用いられているが、意匠法上の意匠は、製品デザイン分野に限定されると言える

従って、意匠法上の意匠とは、物品 物品の部分を含む の形状、模様、色彩、又はこれらの結合であって、視覚を通じて美観を起こさせるものをいう。

 

意匠の機能

 

(1) 直接的機能
意匠は物品に関する美的外観の創作を対象とするものであるため、これを通じ需要者の購買意欲を刺激し、需要を増大させる機能をいう。

(2) 間接的機能
物品に関する美的外観の創作が、機能的な面と結合して他の技術や意匠を創作させる契機となり、新規の意匠である場合、これを登録して他人の模倣行為を防止することにより、不正競争を防止する機能をいう。

 

意匠の成立要件

 

1. 物品性
(1) 意匠は、物品と不可分の関係を有するものであり、物品を離れては存在し得ない。即ち、意匠法上の意匠は、物品の外観を保護するものであると言える。
ここにおいて、物品とは、原則的に“独立性がある具体的な物品であり有体動産”を意味するものであるので、意匠法上、次のようなものは物品になり得る。
- 不動産(ただし、大量生産され運搬が可能なものは除く)
- 気体、液体、電気、光、熱、及び音響等のように、一定の形態がないもの
- セメント、砂糖のように、分散物又は粒状物の集合からなるもの
- ハンカチ、又はタオルを畳んでなされる花模様のように、物品自体の形態でないもの

(2) 2001 年7月1日から、部分意匠制度が導入され、靴下のかかと、瓶の口先、コーヒーカップの取っ手のように、独立して取引の対象にならない物品の部分も、意匠登録を受けることができる。

(3) 最近、情報通信技術の急速な発展に伴い、2003年7月1日から「物品の液晶画面等の表示部に表される図形等」画像デザインが、意匠の構成要素である模様として保護されている。
即ち、意匠法上の保護対象として認められる物品として、液晶画面等の表示部を有しているあらゆる情報化機器等は、画像デザインを表示した状態で、意匠登録を受けることができる。 意匠の構成要素として認められる画像デザインの範囲には、おおよそグラフィックユーザインターフェース(GUI) 、アイコン及びグラフィックイメージ等が含まれる。

2. 形態性
意匠は、形状、模様、色彩、又はこれらが結合したものである

(1) 形状
物品が空間を占めている輪郭をいい、すべての意匠は形状を伴っている。

(2) 模様
物品の外観に現れる線図、色分け、ぼかしをいう。
-線図:線で描いた図形
-色分け:色と色とを線でなく色で塗り分けたもの
-ぼかし:色と色の境目をぼんやりさせて、色が自然に移っていくように見せたもの

(3) 色彩
物品に反射される光によって、人間の網膜を刺激する物体の性質であり、視覚により識別し得るよう物品に彩色された色をいい、意匠法上の色彩は、透明色と金属色を含む。

3. 視覚性
意匠は、肉眼で識別し得るもののみを対象とする。従って、視覚以外の感覚を主として把握されるもの、分散物のように肉眼で識別し得ないもの、分解したり破壊したりしてはじめて見れるもののように、外部から見れないところは、意匠保護の対象になり得ない。ただし、蓋を開けるもののような構造からなるものは、その内部も意匠の対象となる。

4. 審美性
意匠は、美観を生じさせるものでなければならない。即ち、該当物品から美を感じることができるよう処理が施されているものをいう。従って、機能、作用効果を主目的とするもので美観をほとんど生じさせないもの、構造がなく粗雑感のみを与えるもの等は、審美性がないものとみて、登録が拒絶される。

 

意匠の登録要件

 

意匠登録出願をした意匠が登録を受けるためには、意匠の成立要件を充足しなければならず、また、ⅰ) 新規性、ⅱ)創作性、ⅲ)工業上利用可能性等を充足しなければならず、ⅳ)先願主義及び拡大された先願に違反してはならない。ただし、意匠無審査登録出願された意匠に対しては、方式審査と、ⅰ)成立要件、ⅱ)工業上利用可能性、ⅲ)不登録事由の有無のみを審査している。

 

 

1. 工業上利用可能性

 

(1) 概念
「工業上利用することができる意匠」とは、工業的生産方法により同一物品が量産可能なものをいい、「工業的生産方法」とは、機械による生産方法のみならず、手工業的な生産方法も含む意味である。また、「同一物品が量産可能」とは、物理的に完全に同一な物品を意味するものでなく、一見して同一に見える程度の同一性を意味する。
結局、「工業上利用することができる意匠」とは、出願した意匠に係る物品の反復及び大量生産が可能であり、始めから量産を意図したものでなければならず、単純なアイディアに過ぎないものでなく、技術的に十分達成し得る程度の物品でなければならないという意味である。

(2) 工業上利用可能性がない場合 -自然物をそのまま意匠の構成主体として使用したものであり大量生産ができないもの
-純粋美術の分野に属する著作物

(3) 意匠の表現が具体的でない場合にも、工業上利用することができない意匠に該当し、登録されることができない。例えば、意匠の図面が、正投像図法で作成されていないもの、物品の使用目的、方法、状態等が明らかでないもの、図面が相互一致しないもの等が、これに当たる。

 

2. 新規性

 

(1) 概念
新規性とは、その意匠が、出願前に頒布された刊行物やカタログ等に記載され、または不特定多数人に知られうる状態にあったか、若しくは知られた状態において、実施(販売、展示等)されたものであってはならないという意味である。

(2) 新規性喪失の例外
意匠登録を受けられる権利を有する者の意匠が、国内外において公知、公然と実施された意匠又は国内外において頒布された刊行物に記載された意匠に該当する場合、その日から6ヶ月以内に出願すれば、新規性を喪失しないものとみなす。このような保護を受けるためには、意匠登録出願時にその旨を記載しなければならず、同事実を証明する書類を意匠登録出願の日から 30 日以内に提出しなければならない。

 

3. 創作性

 

(1) 概念
創作性とは、その意匠の属する分野において通常の知識を有する者が、国内において広く知られた形状、模様、色彩またはそれらの結合により、容易に創作することができない意匠でなければならないという意味である。

(2) 容易に創作できる意匠の例
①周知の形状、模様、色彩又はそれらの結合に基づいた容易創作
-三角形、四角形、六角形、円形、円柱、正多面体等周知の図形の形状をそのまま利用した場合
-飛行機、自動車、汽車等の典型的な形状をそのまま利用した場合
-鳳鳥模様、亀の甲羅模様、碁盤模様、水玉模様等、ありふれた模様を単純配列した場合
②自然物、有名な著作物、有名な建造物、有名な景色等を基礎にした容易創作 ③周知意匠を基礎にした容易創作
>当業界において刊行物やTV等を通じて広く知られた自動車や飛行機等の周知意匠を玩具や装置物に転用した場合、ET 人形の形状や模様を貯金箱に転用した場合、卓上用時計の形状や模様をラジオに転用した場合が、容易創作に該当し登録されることができない類型に当たる。

 

4. 拡大された先出願主義

 

(1) 意義<
意匠登録出願した意匠が、当該意匠登録出願日前に意匠登録出願をし、当該意匠登録出願をした後に出願公開または登録広告された他の意匠登録出願の願書に記載の事項及び願書に添付された図面、写真、または見本に現された意匠の一部と同一であるかまたは類似する場合、その意匠については、意匠登録を受けることができないようにする制度をいう。

(2) 適用される類型
* 先出願が全体意匠であり、当該出願が部分意匠である場合
* 先出願が完成品であり、当該出願が部品や付属品の意匠である場合
* 先出願が組物の意匠であり、当該出願が構成物品の意匠である場合

 

5. 登録を受けられない意匠

 

上記の意匠登録要件を備えた意匠であっても、次の場合には登録されることができない

(1) 国旗、国章、軍旗、勲章、記章、その他公共機関等の標章と外国の国旗、国章又は国際機構等の文字や標識と同一又は類似の意匠

(2) 公共の秩序や善良の風俗を乱すおそれのある意匠
-国家元首の肖像及びこれに準ずるもの
-特定国家又はその国民を侮辱するもの
-低俗、嫌悪、その他社会一般の美風良俗に反するもの
-人倫に反するもの
-その他、国際的な信頼関係及び競争秩序を乱すおそれのある意匠

(3) 他人の業務に係る物品と混同をもたらすおそれのある意匠
-他人の著名な商標、サービス標、団体標章、及び業務標章を意匠によって表現したもの(立体商標を含む)
-非営利法人の標章を意匠によって表現したもの

(4) 物品の機能を確保するために不可欠な形状からなる意匠
物品の機能は、技術的機能を意味し、ⅰ) 物品の技術的機能を確保するために必然的に定まる形状(必然的形状) からなる意匠、ⅱ)物品の互換性確保等のために標準化された規格により定まる形状(準必然的形状)からなる意匠は、登録を受けることができない。

 

6. 先出願主義

 

先出願主義とは、同一又は類似の物品に係る同一又は類似の意匠に関し、互いに異なる日に2以上の出願がある場合は、先に出願した者のみが、その意匠について登録を受けることができることをいう。
意匠権は独占権を付与するものであるため、同一又は類似の意匠が、偶然2以上創作されて出願されている場合、もっぱら1人にのみ独占権を付与するために最初の出願人にのみ登録を認めるものである。

 

意匠登録出願

 

出願
意匠登録を受けようとする者は、特許庁に意匠登録出願をしなければならない。意匠登録出願は、産業資源部令の定める物品の区分の中から1物品を指定して記載しなければならないが、意匠審査対象品目の場合は、1意匠ごとに1出願しなければならず、意匠無審査対象品目の場合は、同一の大分類に属する品目に限って、20以内の意匠を1出願として出願することができる。

意匠登録出願時に必要な書類
意匠登録出願と関連して、規定の形式に従って、出願人の人的事項等を記載した出願書が要求されるが、必要書類は次のとおりである。
-出願人の人的事項(氏名、住所)
-意匠創作者の人的事項
-図面又は代用写真
-物品の名称
-代理人を選任する時は、委任状1通
* 優先権を主張するためには、出願書の提出後3ヶ月以内に認証された第一国出願の願書の写しを提出しなければならない。

意見提出通知

 

意匠登録出願後、一定期間が経過すると、出願された順に従い、意匠登録可否の審査が始まり、このとき登録を受けられない理由が見つかると、特許庁は出願人又は代理人に、“意見提出通知書”を発送する。出願人又は代理人は、“意見提出通知書”を受け取った後、一定期間内に意見書を提出しなければならず、提出しない場合、意匠登録出願は拒絶査定される。

 

登録

 

意匠登録出願の審査の結果、登録査定された出願意匠に対し、出願人から登録料の納付を受け、意匠登録原簿に登載して、最終的に権利を設定登録することをいう。

 

登録公告

 

意匠権の設定登録があったときは、意匠権者の氏名、登録番号、登録日、図面等が意匠広報に掲載され公示される。このような登録公告手続きにより、登録意匠の内容が一般に公示され、登録意匠を侵害した者に対しては、過失が推定される効果が発生する。

 

異議申立て

 

意匠無審査登録出願が、登録公告された場合、誰でも、意匠権の設定登録の日から意匠無審査登録公告の後3ヶ月になる日まで、異議申立てを行うことができる。異議申立書は、所定の様式に基づき作成され、必ず異議申立ての理由を記載し、これに必要な証拠を添付しなければならない。既に提出した異議申立てに対する理由や証拠を補正しようとする場合は、異議申立ての日から

 

出願公開制度

 

1. 導入の背景
従来の意匠法によれば、意匠を出願した後、審査手続きを経て登録をするまでは、意匠権が発生しないため、出願中の意匠を第三者が模倣する場合、これに対し適切に対応することのできる制度的なシステムがなかったところ、このような点を考慮して、現行意匠法では、意匠審査登録出願に対して出願公告制度を採用するに至った。

2. 制度の内容
意匠登録出願時又は出願後、出願人の出願公開申請がある場合は、意匠登録前であっても意匠出願の内容を公報を通じて公開し、公開後、第三者の出願意匠に対する無断実施に対して使用を中止するよう書面によって警告する権利が発生し、意匠が登録された後に意匠権者は、出願意匠を無断実施した者に対して補償金請求権を行使することができる。
また、第三者の無断実施がある場合、優先審査を請求して審査期間を短縮することによって早期に補償金請求権を行使することができる。

 

情報提供

 

1. 概念
意匠登録出願された意匠に対して、誰でも、当該意匠が、拒絶理由に該当して登録されることができないとの旨の情報を証拠とともに、特許庁に提供することができる制度である。

2. 内容
意匠登録出願された意匠に対する審査官の審査力量を強化し、審査の質的な向上を図るために意匠登録出願の出願公開有無はもちろん、意匠審査登録出願であるか意匠無審査登録出願であるかを問わず、誰でも、当該意匠が拒絶査定事由に該当する場合、関連証拠とともに情報を提出することができる。

 

意匠特有の制度

 

意匠は、模倣が容易で且つ流行性が強いという特性があるため、幾つか特有の制度を設けている。

1. 意匠無審査登録制度
(1) 概要
意匠無審査登録制度とは、流行性が強く、ライフサイクルの短い織物紙、壁紙、衣服類、寝具類等、一部の物品に対して、方式要件と一部の登録要件のみを審査して登録する制度である。出願後、登録まで特別な拒絶理由がない限り約4ヶ月が所要される。

(2) 背景
流通技術の発達と生活文化の急速な変化によって、製品のライフサイクルが急速に短くなっており、これらの物品の意匠に対しては、優先的に迅速に登録を受けることができるようにする必要があり、また季節ごとに製品のデザインパターンが変化する物品に対する迅速な権利保護を求める産業界の要請に応えるため、意匠無審査登録制度が導入された。

(3) 無審査登録対象物品
意匠法施行規則別表4に規定されており、次のとおりである。
OB1:衣服類
OC1:寝具、カーペット、カーテン等
OF3 :事務用紙製品、印刷物等
OF4:包装紙、包装用容器等
OM1 : 織物紙、板、紐等

(4) 複数意匠登録出願制度
意匠審査登録対象物品の意匠は、1意匠ごとに必ず独立した1つの出願書で出願しなければならない。しかし、意匠無審査登録対象物品は、1意匠ごとに1つの出願書で出願することもでき、20以内の意匠を1つの出願書で出願することもできる。

(5) 異議申立制度
無審査で登録された意匠権の中には、実体的な登録要件を欠く意匠が多数存在する可能性があり、このような瑕疵ある権利について、多額の費用と長期間の処理期間が所要される審判や訴訟手続きによらず、簡便な行政処理により登録を取消し得るよう、意匠無審査登録については、異議申立てができる。
即ち、無審査で登録された意匠権に対しては、誰でも設定登録があった日から意匠無審査登録公告日の後3ヶ月になる日まで、異議申立てを行うことができる。

 

 

2. 類似意匠制度
(1) 意匠は、基本意匠が創作された後、これを基にして幾つかの変形意匠が継続して創作される特性がある。また、意匠権は、他人の模倣、盗用が容易であるが、その類似範囲は抽象的で不明確であることに伴い、予め類似範囲内の類似意匠の登録を受け、侵害を未然に防止する必要性がある。

(2) 背景
類似意匠権は、基本意匠の意匠権とともに移転し消滅する。ただし、類似意匠だけを無効審判又は権利範囲確認審判の対象にしたり、権利を放棄することはできる。

 

 

3. 組物意匠制度
(1) 意匠法は、組物として使用される物品であって全体として統一性がある場合は、1つの出願により審査、登録ができるようにする組物意匠制度を設けている。

(2) 組物物品意匠対象品目
一対の女性用韓服セット、一対の男性用韓服セット、一対の女性用下着セット、一対の装身具セット、一対のカフスボタン及びネクタイピンのセット、一対の喫煙用具セット等、31個の物品が指定されている。

 

 

4. 秘密意匠制度
(1) 意匠は、模倣が容易であり、且つ流行性が強いため、意匠権者が実施事業の準備を完了していない状況において公開される場合には、他人の模倣により事業上の利益を全て喪失する恐れがある。従って、意匠登録出願時、出願人の申請がある場合は、意匠権の設定登録の日から3年以内の期間の間、公告せず秘密にすることができる。秘密にすることができる期間は、出願人が定め、その期間は、登録日から3年以内において延長又は短縮することができる。

(2) 秘密意匠の閲覧が可能な場合
-意匠権者の同意を得た者の請求がある場合
-審査、審判、訴訟の当事者や参加人の請求がある場合
-意匠権侵害の警告を受けた事実を疎明した者の請求がある場合
-法院の請求がある場合

 

意匠権

 

1. 存続期間
意匠権の存続期間は、意匠権の設定登録の日から 15年である。ただし、類似意匠権は、基本意匠権と同一である。

2. 意匠権
出願意匠に対し登録査定がなされた後3ヶ月以内に、所定の登録料を特許庁に納付することによって、意匠権は発生する。権利の設定登録時には、最初3年分の登録料を納付しなければならず、その後4年次分以降の登録料に対しては、一年単位で納付するか、必要な期間の単位で一括して納付が可能である。
設定登録料及び年次登録料の納付時期を逃した場合、6ヶ月以内に追加に納付して再登録することができる。また、6ヶ月の猶予期間も逃した場合も、本人の責めに帰すことのできない不可抗力的な事由により登録料が納付できない場合は、その事由がなくなった日から 14 日以内に、証拠書類等を添付して登録料を追加納付することができる。
ただし、6ヶ月の猶予期間満了日から6ヶ月を経過したときは、登録料を納付することができない。

3. 意匠権の効力
(1) 意匠権の内容
意匠法第 41 条は、意匠権者は業として登録意匠又はこれに類似する意匠を実施する権利を専有すると規定している。
①“業として”:業としてとは、営利を目的として実施することはもちろん、反復、継続して行われるものは、全て含む意味である。即ち、個人的に、又は一時的、一回的に実施するものは除く。
②“実施”:実施とは、意匠に係る物品を生産、使用、譲渡、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸し渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。をする行為をいう。
③“専有”:当該意匠又は類似の意匠を独占的に実施する権能を有するとともに、第三者が当該意匠と同一又は類似の意匠を実施することを排除する権能も有する独占排他権という意味である。

(2) 意匠権の効力範囲
意匠権の効力は、登録意匠と同一の意匠のみならず、これと類似する意匠に及ぶ。意匠権の効力が類似の意匠にまで及ぶようにしたのは、特許、実用新案のような技術的思想と異なり、意匠を同一の場合にのみ限定する場合、その保護対象が極めて狭くなり、制度の目的を達成することができなくなるからである。

4. 意匠権の制限
(1) 意匠権の効力が及ばない範囲
-研究又は試験をするための登録意匠の実施
-国内を通過するに過ぎない船舶、航空機、車両、又はこれに使用される機械、器具、装置、その他の物
-意匠登録出願時から国内にある物
-出願前から国内に既に存在していた物に対しては権利が及ばない、しかし、権利が登録された後には、第三者がそれと同一の物を継続して生産することは認められない。

(2) 実施権による制限
-登録権利者が、他人に専用実施権又は通常実施権を設定する場合は、その設定された範囲内において、登録権利者の独占的権利を制限する。

(3) 利用、抵触関係による制限
-自らの登録意匠が、他人の特許権、実用新案、商標権、意匠権等を利用するか、又は抵触関係にある場合は、その他人の同意を得るか、若しくは通常実施権許与審判によらずしては、自らの意匠を業として実施することができない。